1. はじめに

本文書は、ヤマハ株式会社(以降、当社)無線LANアクセスポイント WLX413(以降 本製品)の機能や性能についての技術情報資料(以降、 本資料)です。
本資料中のデータは、WLX413で、当社の測定環境における測定結果であり、お客様の環境での性能を保証するものではありません。
本資料において当社は、

  1. 本製品の運用目的の範囲内でのみ利用可能とします。

  2. 当社以外の改変は禁止します。

  3. 承諾なしに、掲示、転載等を禁止します。

  4. 権利やライセンスの移転および許諾を与えるものではありません。

  5. 正確性、有用性、適合性等のいかなる保証をするものではありません。

  6. いかなる損害についても責任を負うものではありません。

  7. 断りなく更新、修正、変更、削除することがあります。

2. 測定項目

本資料では、以下の項目について解説します。

  • ショートフレーム性能
    本製品のショートフレームの転送性能を測定します。

  • 耐高温性能
    本製品が動作保証最大温度で性能低下がないことを確認します。

  • 電波の到達距離
    本製品と無線端末(PC)の最大通信距離を測定します。

  • Zoom同時50台の接続検証
    本製品に無線端末を50台接続し、Zoomを同時に使用した場合の接続検証結果を動画で公開しています。

  • IEEE 802.11k/v 機能の機能改善
    本製品の IEEE 802.11k/v 機能の機能改善について記載します。

3. ショートフレーム性能

テレワークやサテライトオフィスなど企業のワークスタイルが大きく変化する中で、遠隔会議の利用が拡大しています。遠隔会議ではリアルタイム性の確保から通信にはショートフレーム(ショートパケット)が使用されますが、それはデータの中継機器(ネットワーク機器)にとって大きな負荷となります。快適な遠隔会議のためには中継機器は、そのショートフレームをスムーズに処理することが重要になります。本測定では、WLX413(本製品)とWLX402(旧ラインアップのハイエンドモデル)のショートフレーム転送処理性能を測定、比較します。

3.1. 測定機材

  • AP: WLX413(本製品), WLX402(旧ラインアップのハイエンドモデル)

  • 測定ツール: IxChariot(デバイスとネットワークのパフォーマンステスター)

  • 無線端末: PC(802.11ax対応 2x2)

3.2. 無線規格と周波数

無線規格については以下のパターンで測定します

  1. WLX413: 802.11ax(Wi-Fi 6)

  2. WLX413: 802.11ac(Wi-Fi 5)

  3. WLX402: 802.11ac(Wi-Fi 5)

周波数帯については5GHz帯を使用します。

3.3. フレームサイズ

測定に使用するフレームのサイズは以下の通りです。

  • ショートフレーム:370 Byte (※)

  • ロングフレーム: 1518 Byte(参考測定)

※事前にZoomの音声会議で送受信されているフレームを観測し、その中で多く使用されていたフレームのサイズから測定に使用するフレームサイズを決定

3.4. 測定方法

APの有線LANポートに接続したPCからAPに無線LAN接続した無線端末向けてIxChariotでショートフレームを送信し、スループットを測定します。
また、参考として、ロングフレーム(1518 Byte)でも測定を行います。

3.6. 結論

ショートフレームの転送性能において、WLX413の値は旧モデルWLX402に対して、約3倍の性能が計測できています。また、WLX402ではショートフレームの転送性能がロングフレームの24%に低下していることに対して、WLX413では802.11ac(Wi-Fi 5)で79%、802.11ax(Wi-Fi 6)で67%と、低下率が抑えられています。
WLX402もVoIPシステムにおいて高いショートフレーム性能が評価されていましたが、WLX413においては処理性能向上により、さらに安定したリアルタイム性能を提供できます。

4. 耐温度性能

ネットワーク機器は、さまざまな場所での設置・運⽤が想定され、今では重要なインフラであるWi-Fi を提供する無線APは、様々な環境での安定動作が求められます。⼀般的なIT機器の動作保証温度は0-40℃であり、また、保証温度内でも限界温度に近い状況では⾃動的に性能を低下させて製品を保護する機能が働く場合もあります。重要かつ必要不可⽋なインフラを担う無線APとして、WLX413(本製品)は動作保証温度0-50℃を確保し、また保証温度内では性能低下が起こらないようにハードウェアの設計をしています。本件では一般的な室温(かつ保証温度の中間値)である25℃と比較して、最低動作温度0℃、最高動作温度50℃での性能低下がないことを検証します。

4.2. 測定内容

環境温度0℃、25℃、50℃それぞれにおいて、以下の測定を行いました。

  • スループット

  • 機器内部温度(WLX413のshow environmentコマンドで表示される項目の「Inside Temperature(C.)」の値)

4.3. 測定方法

環境温度0℃、25℃、50℃(恒温槽を使用)の状態においてWLX413に無線端末を3台接続し、下りの合計スループットを1時間測定します。(各環境温度において機器内部温度も確認します。)

4.4. 測定結果

環境温度0℃、50℃において、環境温度25℃(室温)と同等のスループット値が確認できました。

環境温度 機器内部温度 平均Totalスループット

0℃

25.6℃

3.25 Gbps

25℃

50.5℃

3.41 Gbps

50℃

78.7℃

3.23 Gbps

環境温度毎の1時間のスループット

4.5. 結論

1時間の測定において、最低動作保証温度0℃、最高動作保証温度50℃の各スループットが室温25℃と大きな差異はないため、動作保証温度内でほぼ性能低下はないと言えます。ただし、WLX413は屋内設置用の製品であるため、動作保証温度内でも屋外や車載などでは保証できませんので、マニュアルの注意事項に従った利用をお願いします。

5. 電波の到達距離

無線APの設置、運用ではどの程度まで電波が届くかは非常に気になることです。ここでは、本製品の設置や運用の参考にするするために、本製品と無線端末(PC)との通信可能な最大距離を測定します。
尚、本製品の設置・運用にあたり、アンテナの指向性や設置方法のより詳しい情報が必要な場合は、 「アンテナ指向性」 「設置方法とアンテナ選択」 をご覧ください。

本測定項目の結果に示す到達距離は、お客様環境で無線端末がその距離で快適に通信できることを意味するものではありません。 無線端末がAPに接続できたとしても、そのときの通信速度が十分かどうかはお客様のネットワークで要求されるサービスレベルに依存します。

5.1. 測定機材

  • AP: WLX413(本製品)

  • 無線端末: PC(802.11ax対応 2x2)

5.2. 測定周波数

2.4GHz, 5GHz(1), 5GHz(2) の3周波数を使用します。
周波数毎に以下のアンテナを使用します。
. 2.4GHz/5GHz(1)共用 4x4内蔵アンテナ
. 5GHz(2)専用 4x4 内蔵アンテナ

5.3. 測定方向

APの6面(下図のA~Fの方向)に対して測定を行います。

到達距離 測定方向 A-B
到達距離 測定方向 C-F

5.4. 測定の組み合わせ 18パターン

以下の表の左側の3つの周波数帯において、右側の6方向で測定を行います。

到達距離 組み合わせ

5.5. 測定方法

いったんAPの近で無線端末をAPに接続し、そのままAPから離れて行きます。Web GUIの画面表示、設定操作に異常がないことが確認できた距離を2回測定し、平均値を「到達距離」とします。

5.7. 結論

APは4x4、PCは2x2の内蔵アンテナでMIMOに対応しています。PCの2x2に対して、APの4x4が有利に働き、2.4GHzで550m, 5GHzで1km前後の到達距離が測定できたと考えられます。
AP内蔵アンテナの方向による違いは、

  • 2.4GHz/5GHz(1) は裏面B方向に比べて他方向は極端な違いはない

  • 5GHz(2)は表面Aと裏面Bの差異が大きい

  • 5GHz(1)に比べて5GHz(2)の表面A方向の距離が大きい

ことから、アンテナ指向性(2.4GHz/5GHz(1)は無指向性、5GHz(2)は指向性)におおむね準ずる測定結果となっています。
本結果から、無線到達距離を重視する場合は、無線端末に対してできるだけ表面を向けた設置が良いことになります。
つまり、実運用においては、目的によって以下のように設置方法を選択することが望ましいです。

  • 無線到達距離を確保する場合:

    • 壁掛け設置 (場所によっては通信速度の差異が大きい場合がある点には注意)

  • 決められたエリア内で、端末全体に対して安定した通信速度を確保する場合:

    • 天井設置

ただし、実運用では障害物や反射の影響もあるため、この測定値を参考にしつつも、仮設置などにより実測することを推奨します。

6. Zoom同時50台の接続検証

本製品に無線端末を50台接続し、Zoomを同時に使用した場合の接続検証結果を動画で公開しています。以下をご参照ください。
ヤマハ無線LANアクセスポイント WLXシリーズ Wi-Fi 6対応モデル Zoom同時50台の接続検証

7. IEEE 802.11k/v 機能の機能改善

7.1. 概要

本章では本製品の ローミングアシスト機能 - IEEE 802.11k/v の機能改善について記載します。
接続分散の効果を確認するため、100台の無線端末を4台のAPに接続させたとき、時間経過に伴って接続先が分散していく様子を測定した結果を記載します。比較のために本機能改善前の従来バージョンを使用した場合でも測定します。

7.1.1. 対応ファームウェアリビジョン

IEEE 802.11k/v 機能の従来バージョンと機能改善後のバージョン

モデル

ファームウェア

従来バージョン

機能改善バージョン

WLX413

Rev.22.00.08

Rev.22.00.09以降

WLX222

Rev.24.00.08

Rev.24.00.12以降

WLX322

Rev.25.00.03

Rev.25.00.07以降

WLX323

Rev.25.01.03

Rev.25.01.07以降

7.1.2. 改善点① IEEE 802.11k/v 従来機能の改善

本機能の改善点の一つ目は、ローミング誘導を開始する閾値の調整です。
APは接続している無線端末の受信信号強度を監視します。その値が特定の閾値を下回ると、APはIEEE 802.11k/v によるローミングを促す動作を開始します。
この閾値を高くしたことで、より早いタイミングで接続状態の悪化を検知し、ローミング誘導を開始できるようになりました。

7.1.3. 改善点② IEEE 802.11k/v を用いた接続分散機能の追加

本機能の改善点の二つ目は、接続分散機能の追加です。
狭い範囲に複数のAPを設置して多数の無線端末を使用する環境(高密度無線LAN)においては、APごとに無線端末が適切に接続分散(ロードバランス)されることが、大容量の通信帯域を確保するための要所の1つとして考えられます。
IEEE 802.11k/vを用いた接続分散機能を使用することで、各APに接続した端末台数をトリガーにしてローミングを促すことができるようになります。

  • 接続台数が10台を超えたとき、接続中の全無線端末に対して IEEE 802.11k によるリクエスト(無線端末から周辺の無線情報収集するための要求)を送信します。

    • 接続台数が10台を超えている状態が続いているとき、10分毎に同様のリクエストを送信します。

  • 接続先APを決定するスコアの計算式において、端末接続台数パラメータに対する重み付けを従来よりも高く設定しました。

7.2. 測定機材

  • AP: WLX322、4台

  • 無線端末:PC、100台

7.3. 測定方法

15m四方のエリアの四隅にAPを設置、エリアの内側に25台ずつまとめて無線端末を設置します。
APに無線端末を接続し、接続開始から1分/2分/3分/4分/5分/10分/15分/20分のタイミングで各APのWebGUIやシステムログから接続端末台数を記録します。

接続分散の測定環境
IEEE 802.11k/vを用いた接続分散の測定環境

7.4. 測定結果

接続分散の測定結果_改善後
IEEE 802.11k/v 機能改善後のバージョンを用いる場合の測定結果
接続分散の測定結果_従来
IEEE 802.11k/v 従来バージョンを用いる場合の測定結果

7.4.1. 結果

機能改善後の IEEE 802.11k/v 機能を用いる場合、時間経過に伴って端末がより条件の良いAPへと移動(IEEE 802.11k/vによるローミング動作)し、接続分散が適切に行われる様子を確認できました。
接続台数が10台を超えると IEEE 802.11k/v を用いた接続分散機能の動作が始まるため、接続開始から2,3分経過後から端末のローミング動作が頻発して各APの接続台数がダイナミックに変化します。その後は受信信号強度閾値によるローミングで緩やかに接続台数が変化していき、5分程経過すると収束に向かい安定してくる様子が見えます。
改善前の従来バージョンの場合、始めに接続したAPに接続し続ける様子を確認しました。受信信号強度の閾値が低いため下回らず、IEEE 802.11k/v 機能によるローミング動作は発生しませんでした。

7.5. 結論

IEEE 802.11k/v 機能の機能改善によって、ローミング動作が積極的に発生するようになり、より最適な接続環境を目指す動きが見られます。