OSPFv3設定ガイド

$Date: 2012/08/01 04:23:00 $


OSPFv3の設定を行う上での基本的なガイドラインを示します。

OSPFv3を使用する

OSPFv3を使用するためには、ipv6 ospf useコマンドを設定します。

        # ipv6 ospf use on

ルーターIDの決定

このルーターのルーターIDを決定します。 OSPFv3が動作するルーターは、OSPFv3ルーティングドメイン内で 一意なルーターIDを持ちます。

RTシリーズにおけるOSPFv2の実装では、 ルーターIDとIPv4アドレスは同じ32bitであることから、 インタフェースに付与されたIPv4アドレスをルーターIDの初期値として 扱います。 しかし、IPv6に対応したOSPFv3では、IPv6アドレスが128bitであるのに対し ルーターIDが32bitであるため、IPv6アドレスをルーターIDとしてそのまま利用する ことができません。

そこで、ipv6 ospf router idコマンドによりルーターIDを設定します。 ルーターIDはIPv4アドレスと同様の表記法で指定します。

        # ipv6 ospf router id 192.168.128.1

また、RTシリーズにおけるOSPFv2の実装を考慮し、OSPFv3の実装では インタフェースにプライマリIPv4アドレスが付与されている場合、 そのアドレスをOSPFv3のルーターIDの初期値として扱います。 インタフェースは以下の順番でサーチします。
なお、LOOPBACKインタフェースはRTX3000 Rev.9.00.56以降でサーチします。

LAN1 → LAN2 → ... → LANn → LOOPBACK1 → LOOPBACK2 → ...

いずれのインタフェースにもIPv4アドレスが付与されていない場合、 初期値として利用できる値はないものとされ、ipv6 ospf router id コマンドでルーターIDを設定しなければなりません。

インタフェースにプライマリIPv4アドレスが付与されていても、 ipv6 ospf router idコマンドでルーターIDが指定されている場合には、 ipv6 ospf router idコマンドで指定された値をルーターIDとして使用します。

エリアの設定

このルーターが属するエリアをipv6 ospf areaコマンドで設定します。

ipv6 ospf areaコマンドでは、エリアを設定すると同時に、そのエリアが スタブエリアかどうかを設定できます。スタブエリアか否かの設定は、そのエリア に属するすべてのOSPFv3ルーターで一致している必要があります。

このルーターがエリア境界ルーターである場合には、必ずバックボーンエリアも設定 します。エリア境界ルーターは直接バックボーンエリアに属しているか、そうでなければ 仮想リンクによってバックボーンエリアと接続していなければなりません。

        # ipv6 ospf area backbone
                  バックボーンエリアを設定する
        # ipv6 ospf area 1 stub
                  エリア1をスタブエリアとして設定する
        # ipv6 ospf area 2
                  エリア2を設定する

エリアのネットワークの範囲の設定

エリア境界ルーターでは、バックボーン以外のエリアに対して、そのエリア内の サブネットの範囲をipv6 ospf area networkコマンドで設定できます。 ipv6 ospf area networkコマンドでエリア内のサブネットの範囲を設定してお くと、そのエリアの経路情報を他のエリアへ広告するとき、エリア内の個々の経路 を広告するのではなく、ipv6 ospf area networkコマンドで設定した サブネット経路に要約して広告します。

エリアのネットワーク範囲は必ずしも設定する必要はありませんが、要約した経路情 報を広告するため、他のエリアで扱う経路情報が少なくなるというメリットがありま す。

また、restrictキーワードをつけたipv6 ospf area networkコマンドを設定 すると、そのサブネットの範囲に含まれる経路は要約した経路も含めて、他の エリアに一切広告しなくなります。

        # ipv6 ospf area network 1 fec0:12ab:34cd::/64
                  エリア1以外のエリアには、経路としてfec0:12ab:34cd::/64を広告する

インタフェースの設定

インタフェースが属するエリアをipv6 IF ospf areaコマンドで設定します。

LANインタフェースの場合には、IFにはインタフェース名(lan1, lan2...)が 入ります。PPインタフェースの場合には、ppが入り、pp selectコマ ンドで選択したPPインタフェースに対する設定となります。同様に、トンネルインタ フェースの場合には、tunnelが入り、tunnel selectコマンドで選択 したトンネルインタフェースに対する設定となります。

        # ipv6 lan1 ospf area backbone
                  lan1はバックボーンエリアに属する
        # pp select 1
        pp1# ipv6 pp ospf area 1
                  pp1はエリア1に属する

リンクのタイプについて

OSPFv3では、インタフェースが接続するリンクに応じ、4種類のリンクタイプを 想定しています。

RTX3000の実装では、4つのリンクタイプのうち、ブロードキャスト型と ポイント・ポイント型の2つをサポートします。

インタフェースが接続するリンクのタイプは ipv6 IF ospf areaコマンドのtypeパラメータで設定します。 LANインタフェースの場合には、ブロードキャスト型を表すbroadcast のみが設定できます。 PPインタフェースでPPPを利用する場合やトンネルインタフェースの場合には、 ポイント・ポイント型を表すpoint-to-pointのみが設定できます。

その他のインタフェースに関するパラメーターについては OSPFv3コマンドを参照してください。

仮想リンクの設定

バックボーンエリアを除くすべてのエリアは、バックボーンエリアと接していなければ なりません。よって一般的には、エリア境界ルーターは必ずバックボーンエリアに属する インタフェースを持ちます。

しかし、エリアの分割の仕方によっては、バックボーンエリアと接していない エリアができてしまうことがあります。この場合、このエリアに属する エリア境界ルーターは、バックボーンエリアに属するインタフェースを 1つも持っていないことになります。このようなエリア境界ルーターは、バックボーン エリアに属する他のエリア境界ルーターとの間に仮想リンクを設定する必要があります。

仮想リンクはただ1つのエリアを通過する形で設定されます。ですから、仮想 リンクを設定する2つのエリア境界ルーターは同一のエリアに属していなければ なりません。このとき、エリアを通過するためにグローバルアドレスを使用します。 よって仮想リンクを利用するには、通過するエリアに属するインタフェースに グローバルアドレスが付与されていなければなりません。

仮想リンクはipv6 ospf virtual-linkコマンドで設定します。仮想リンクの 相手となるルーターのルーターIDと、仮想リンクが通過するエリアを指定します。

        # ipv6 ospf virtual-link 192.168.100.1 2
                  エリア2を通過し、ルーターID:192.168.100.1への仮想リンクを設定する

仮想リンクは一時的なものとして利用すべきです。仮想リンクを固定的に使用するの は、OSPFv3トラフィックが増大し、設定を複雑にしてトラブルの要因が増えるだけで好 ましいものでありません。仮想リンクが生じないようにエリアの分割を見直すべきで す。

外部プロトコルからの経路の導入

OSPFv3では、OSPFv3以外のプロトコル(静的経路、RIPng)によって取得した 経路を外部経路として他のルーターに配布することができます。この機能を利用すると、 ダイアルアップ接続の先は静的経路を設定してOSPFv3で配布したり、RIPngルーティングドメイン とOSPFv3ルーティングドメインの仲立ちをすることができます。

外部プロトコルで取得した経路をOSPFv3へ導入するためには、 ipv6 ospf import fromコマンドを設定します。 パラメータとして、外部プロトコルのプロトコル名と、外部プロトコルで取得した 経路を選別するフィルタのフィルタ番号を指定できます。 プロトコル名のみを指定した場合、外部プロトコルから取得したすべての経路を 導入します。同時にフィルタ番号を指定した場合、フィルタの定義に従って経路 を選別し導入します。

経路に適用するフィルタはipv6 ospf import filterコマンドで定義します。 フィルタでは、選別する経路をIPv6プレフィクスで列挙します。IPv6プレフィクスの 解釈の方法として、includerefinesequalの3つを指定 できます。

ある経路を、フィルタに指定されたIPv6プレフィクスの解釈の方法に従って 評価した結果、1つでも該当するIPv6プレフィクスがあったとき、 その経路はフィルタに合致したものとされ、その経路を導入すると判断されます。

否定形としてnotを指定した場合は、いずれのIPv6プレフィクスにも該当しない とき、その経路はフィルタに合致したものとされ、その経路を導入すると判断されます。

rejectを指定した場合は、このフィルタで指定されたIPv6プレフィクスに 1つでも該当する経路はフィルタに合致したものとされ、導入しないと判断されます。

        # ipv6 ospf import filter 1 include fec0:12ab:34cd::/64
                fec0:12ab:34cd::/64自身を含み、fec0:12ab:34cd::/64に含まれる経路を導入する
        # ipv6 ospf import filter 2 refines fec0:12ab:34cd::/64
                fec0:12ab:34cd::/64自身を除き、fec0:12ab:34cd::/64に含まれる経路を導入する
        # ipv6 ospf import filter 3 equal fec0:12ab:34cd::/64
                fec0:12ab:34cd::/64自身を導入する
        # ipv6 ospf import filter 4 not equal fec0:12ab:34cd::/64
                fec0:12ab:34cd::/64以外の経路を導入する
        # ipv6 ospf import filter 5 reject equal fec0:12ab:34cd:1::/64
                fec0:12ab:34cd:1::/64を導入しない

ある経路がフィルタで選別される場合は、ipv6 ospf import fromコマンドで 指定された順にフィルタによって評価されます。順にフィルタで評価した結果、 最初に合致したフィルタの定義に従い、その経路を導入するか否かが決定されます。 いずれのフィルタにも合致しなかった場合、その経路は導入されません。

        # ipv6 ospf import from static
                静的経路をすべて導入する
        # ipv6 ospf import from rip filter 1
                フィルタ1を適用した上でRIPngで取得した経路を導入する

OSPFv3の設定を有効にする

以上のOSPFv3関係の設定はすべて、ipv6 ospf configure refreshコマンドを 入力すると有効になります。OSPFv3関係の設定変更を行なったら必ずipv6 ospf configure refreshコマンドを入力してください。

すでにOSPFv3の設定が有効である状態でipv6 ospf configure refreshコマンドを 入力した場合、初期状態からOSPFv3関係の設定を再度読み込み直します。よって、 それまでにOSPFv3が保持していた経路情報や他のプロトコルに配布した経路情報は一旦破棄され、初期状態から動作を開始します。

        # ipv6 ospf configure refresh

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