1. 概要

MLO(Multi‑Link Operation)は、無線モジュールを複数同時に接続することで低遅延かつ安定性の高い通信を実現する機能です。

MLOにはいくつかのモードが存在します。
各周波数帯でそれぞれ独立して送受信が行える場合は、STR(Simultaneous Transmit and Receive)モードが有効です。例えば、5GHz帯を送信用に、6GHz帯を受信用に使い分けたり、5GHz帯と6GHz帯の両方を送信用・受信用に使うことができます。複数の周波数帯を同時かつ非同期に通信に使用することにより、低遅延かつ安定性の高い通信を実現できます。
複数のリンクが十分に分離されておらず、一方のリンクが他方のリンクの干渉となってしまうような状況では、STRモードが有効に機能しない場合があります。その場合は、NSTR(Non‑Simultaneous Transmit and Receive)モードが有効です。
NSTRモードでは、リンク間の送信状態と受信状態が混在しないよう、送信期間を同期させて通信します。そのため、送受信を同時に行うことはできません。例えば、5GHz帯と6GHz帯を同期して同時に送信に使用することで、送信状態と受信状態の混在を避けます。NSTRモードは、自己干渉を避けながら、従来の単一リンクでの通信に比べて、高速、低遅延な通信を実現できます。

表 1. MLOのモードまとめ
同時送受信 通信方式 性能 干渉耐性

STR

可能

非同期・並列

最も高い

制約ありだが改善

NSTR

不可

同期・時間分割

低い(分離が必要)

高い

また、複数の無線モジュールを同時に使用可能かどうかで、MLOの動作に違いがあります。
MLMR(Multi‑Link Multi Radio)では複数の無線モジュールを同時に利用できるため、STRで動作可能です。そのため、送受信を同時に行うことができます。
一方、MLSR(Multi‑Link Single Radio)では複数の無線モジュールを同時に利用できないため、NSTRで動作することが前提となります。そのため、送受信を同時に行うことはできません。

表 2. MLOの無線モジュールによる動作まとめ
無線モジュール STR NSTR

MLMR

複数

可能

可能

MLSR

単一

不可

前提(常にNSTR)

さらに、MLSRを発展させたeMLSR(Enhanced Multi‑Link Single Radio)も存在します。
eMLSRは、複数のリンクを用いて通信を同時に待ち受け、通信の要求を受け取ったときに単一のリンクで送受信を行います。
eMLSRでは、特にある周波数帯が混雑しているような状況の場合に、従来の単一リンクでの通信に比べて、高速、低遅延な通信を実現できます。筐体のサイズや発熱などの制約で多数のアンテナを搭載できないスマートフォンなどの無線端末において有効です。

本製品では、STR-MLMR、eMLSR、MLSRの3つの接続方式に対応しています。

表 3. 本製品が対応する接続方式
説明

STR-MLMR

複数の無線モジュールを同時に使用して、送受信を同時に行うことが可能

MLSR

従来の単一リンクでの通信に比べて、高速、低遅延

eMLSR

MLSRを発展させたもので、通常のMLSRに比べて低遅延・高効率

2. 注意事項

  • 本機能を利用して接続している無線端末に対してローミングアシスト機能(IEEE 802.11k/v、適応型ローミングアシスト)は基本的に動作しません。

  • 本機能が「使用する」に設定されているSSIDであっても、本機能を利用して接続していない無線端末に対しては、ローミングアシスト機能(IEEE 802.11k/v、適応型ローミングアシスト)が動作します。

  • 本機能を利用して通信するには、無線端末側もMLOに対応している必要があります。

  • 本機能を利用するにあたっては、いくつかの制約があります。詳しくは 設定・操作方法 に記載しています。

  • 本製品の設定で接続方式(STR-MLMRなど)を選択することはできません。本製品と無線端末間で自動的に決定されます。

3. 対応ファームウェアリビジョン

このページで説明する内容は、以下のファームウェアを対象としています。

モデル ファームウェア

WLX232

Rev.27.00.01以降

WLX333

Rev.27.01.01以降

4. 詳細

本機能において、以下の設定や確認を行うことができます。

  • 本機能は作成するVAP単位で有効/無効を切り替えることができます。

  • 本機能を利用して接続する端末数を制限できます。無線モジュールごとに制限できます。

  • 無線端末がMLOで接続しているとき、どの接続方式で接続されているかを確認できます。

5. 設定・操作方法

5.1. 本機能の有効/無効を切り替える

仮想コントローラーのWeb GUI[無線設定] - [共通] - [SSID 管理]で設定できます。
MLOを「使用する」に設定することで有効に、「使用しない」に設定することで無効になります。
設定された内容は、[設定送信] - [設定送信]で設定を送信することで、初めてAPに適用されます。

SSID 管理 - MLO
図 1. SSID 管理 - MLO

設定にあたり、以下の制約があります。

  • 本機能を有効にできるVAPは2つまでです。他のVAPで本機能を有効にする場合は、既に有効になっているVAPの設定で本機能を「使用しない」に設定してください。

  • 本機能は認証方式に「Enhanced Open」、「WPA3-SAE」、「WPA2-PSK / WPA3-SAE」または「WPA3-EAP」が選択されている場合にのみ、使用できます。それ以外の認証方式では使用できません。

  • 本機能は2つ以上の無線モジュールをバインドすることで使用できます。1つ以下の場合では使用できません。

5.2. 本機能を利用して接続する端末数を制限する

仮想コントローラーのWeb GUI[無線設定] - [共通] - [XXX GHz 詳細]で設定できます。すなわち、無線モジュールごとに設定できます。
MLOで接続可能なステーション数で、「MLOで接続可能なステーション数を制限する」にチェックを入れ、テキストボックスに台数を入力することで設定できます。「MLOで接続可能なステーション数」の設定値には「最大ステーション数」の設定値以下の値を設定する必要があります。「最大ステーション数」の設定値を超える値は設定できません。また、「MLOで接続可能なステーション数を制限する」にチェックを入れていない場合、「MLOで接続可能なステーション数」には「最大ステーション数」と同じ値が設定されます。
設定された内容は、[設定送信] - [設定送信]で設定を送信することで、初めてAPに適用されます。

5GHz(1) 詳細設定 - MLOで接続可能なステーション数
図 2. 5GHz(1) 詳細設定 - MLOで接続可能なステーション数

WLX333の5GHz(1)を例に、設定例を以下の表に記載します。あわせて、その下のイメージ図を参照してください。

表 4. WLX333 5GHz(1) MLOで接続可能なステーション数 設定例
最大ステーション数 MLOで接続可能なステーション数 説明 図中の番号

制限なし

制限なし

最大ステーション数、MLOで接続可能なステーション数ともに100で動作します。MLOの使用に関わらず、5GHz(1)で接続できる無線端末は合計で100台です。

(1)

制限なし

50台に制限

最大ステーション数は100、MLOで接続可能なステーション数は50で動作します。5GHz(1)で接続できる100台の内、MLOで接続できる無線端末は50台までに制限されます。

(2)

70台に制限

制限なし

最大ステーション数、MLOで接続可能なステーション数ともに70で動作します。MLOの使用に関わらず、5GHz(1)で接続できる無線端末は合計で70台です。

(3)

70台に制限

50台に制限

最大ステーション数は70、MLOで接続可能なステーション数は50で動作します。5GHz(1)で接続できる70台の内、MLOで接続できる無線端末は50台までに制限されます。

(4)

WLX333 5GHz(1) MLOで接続可能なステーション数 イメージ図
図 3. WLX333 5GHz(1) MLOで接続可能なステーション数 イメージ図
  • 設定例はWLX333の5GHz(1)のものです。最大ステーション数を制限しなかった場合に動作する値は、モデルと無線モジュールによって異なります。

  • (2)や(4)のケースにおいて、新たに無線端末がMLOで接続しようとした場合、MLO端末は上限に達しているため、非MLO端末として接続されることが望まれるかもしれません。しかし、どのように接続しようとするかは無線端末の実装によります。

5.3. どの接続方式で接続されているか確認する

各APのWeb GUI[保守] - [XXX GHz 接続端末一覧]で確認できます。すなわち、無線モジュールごとに確認できます。

5GHz(1) 接続端末一覧 - 5GHz(1) 接続端末
図 4. 5GHz(1) 接続端末一覧 - 5GHz(1) 接続端末