Fast DFS v2機能
1. 概要
5GHz帯の無線LANで、W53(52ch~64ch)およびW56(100ch~144ch)のチャンネルを使用している場合、気象・航空レーダー波を検出したときにはチャンネルを変更する必要があります。しかし、レーダー波と干渉しない、使用できるチャンネルを調べるためには最短でも60秒間かかるため、従来機種では60秒間通信が切断されていました。
この切断状態を避けるために、WLX322ではチャンネルのスキャンを常に行うことでレーダー波に干渉しないチャンネルを把握し、レーダー波を検出したときにすぐにチャンネルを変更します。WLX322ではこの機能を「 Fast DFS v2機能 」と呼称しています。
また、本機能は従来の「Fast DFS機能」を進化させたものです。従来の「Fast DFS機能」では2つの5GHz帯の無線モジュールうち1つをチャンネルのスキャンのために占有していました。これにより、「Fast DFS機能」を使用する場合は使用しない場合と比べて5GHz帯に接続できる無線端末の数が半分になっていました。しかし、本機能ではチャンネルのスキャン用に無線モジュールを占有する必要が無いため、接続できる無線端末の数はそのままにレーダー波検出による通信の切断が無く無線LANサービスを提供できます。したがって、今までより快適に無線LANを利用することができます。
2. 注意事項
-
Fast DFS v2機能は基本的に常に有効です(有効/無効を切り替えるための設定はありません)。
ただし、無線機能の設定によっては本機能が自動的に無効になる場合があります。詳細は 使用条件 を参照してください。
3. 対応ファームウェアリビジョン
このページで説明する内容は、以下のファームウェアを対象としています。
モデル | ファームウェア |
---|---|
WLX322 |
Rev.25.00.02以降 |
4. 用語定義
- DFS
-
"Dynamic Frequency Selection"の略で、レーダーなど既存機器との干渉を検出し、干渉検出時に運用周波数を変更する機能。
5. 機能の効果
本機能によって、気象・航空レーダーを検出した後にW53 / W56のチャンネルを使用する場合でも、60秒間通信が切断することなく速やかにチャンネルを変更できます。
下図に本機能でレーダーを検出した場合のチャンネル遷移の測定結果を示します。
画面上部のグラフが最初に使用しているチャンネル(116ch:5.58GHz)で、画面下部がレーダー検出後の移動先となるチャンネル(52ch:5.26GHz)です。
グラフの縦軸が電波の送信レベルで(1マス10dBm)、横軸が時間の経過(1マス3秒)を示しています。
レーダー検出前は最初のチャンネルで電波を送信していますが、検出と同時に送信を止めます。
最初のチャンネルの送信が止まったのとほぼ同じタイミングで、移動先のチャンネルで電波の出力が始まっています。
Fast DFS v2機能を使用すると、通常のDFS機能で必要な 60秒の待ち時間がないことが分かります。
6. 使用条件
以下の条件を満たしているとき、本機能は自動的に有効となります。
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5GHz(1)の無線LANの使用場所が「屋内で使用する」である
-
5GHz(1)の無線機能が「使用する」である
-
5GHz(1)をバインドした有効なVAPがある
-
5GHz(1)のチャンネルがW53(52ch~64ch)およびW56(100ch~144ch)を使用する設定である
-
自動の場合は、自動チャンネル選択範囲でW53やW56が対象になっている必要がある
-
-
無線LAN見える化機能の動作モードが「低」である
-
ただし、「スキャン」ボタンを押してスキャンを実行しているときは一時的にFast DFS v2機能が無効になる
-
本機能を使用したい場合は、仮想コントローラーのWebGUIで上記条件を満たすように設定してください。
設定後は、[設定送信] - [設定送信]で設定送信を行う必要があります。
レーダー検出によって5GHz(1)のチャンネルがW52(36ch~48ch)になったとき、Fast DFS v2機能は停止します。Fast DFS v2機能が停止すると、W53, W56のチャンネルが使用可能になってもチャンネルはW52から戻りません。
|
7. DFSチャンネルの選択範囲
[基本無線設定]で5GHz帯無線モジュールのDFSチャンネル選択範囲の設定を「モデル毎の推奨値を使用する」としている場合、「無線LANの使用場所」の設定や各無線設定によって、DFSチャンネル選択範囲が決定されます。
また、Fast DFS v2機能が有効となるかどうかも決定されます。
7.1. 屋内で使用する場合
「2.4GHz、5GHz(1)の使用場所」を「屋内で使用する」としている場合は、以下のようにDFSチャンネル選択範囲が決まります。
設定の組み合わせ |
動作 |
||||
---|---|---|---|---|---|
チャンネル幅 |
プライマリチャンネル |
プライマリ40MHzチャンネル |
見える化機能 動作モード |
Fast DFS v2機能 |
DFSチャンネル選択範囲 5GHz(1) |
80MHz |
下測波帯 |
下測波帯 |
低 |
有効 |
52, 100, 116, 132 |
中, 高 |
無効 |
36 |
|||
80MHz |
下測波帯 |
上測波帯 |
低 |
有効 |
60, 108, 124, 140 |
中, 高 |
無効 |
44 |
|||
80MHz |
上測波帯 |
下測波帯 |
低 |
有効 |
56, 104, 120, 136 |
中, 高 |
無効 |
40 |
|||
80MHz |
上測波帯 |
上測波帯 |
低 |
有効 |
64, 112, 128, 144 |
中, 高 |
無効 |
48 |
|||
40MHz |
下測波帯 |
- |
低 |
有効 |
52, 60, 100, 108, 116, 124, 132, 140 |
中, 高 |
無効 |
36, 44 |
|||
40MHz |
上測波帯 |
- |
低 |
有効 |
56, 64, 104, 112, 120, 128, 136, 144 |
中, 高 |
無効 |
40, 48 |
|||
20MHz |
- |
- |
低 |
有効 |
52, 56, 60, 64, 100, 104, 108, 112, 116, 120, 124, 128, 132, 136, 140, 144 |
中, 高 |
無効 |
36, 40, 44, 48 |
7.2. 屋外で使用する場合
「2.4GHz、5GHz(1)の使用場所」を「屋外で使用する」としている場合は、以下のようにDFSチャンネル選択範囲が決まります。
設定の組み合わせ |
動作 |
||||
---|---|---|---|---|---|
チャンネル幅 |
プライマリチャンネル |
プライマリ40MHzチャンネル |
見える化機能 動作モード |
Fast DFS v2機能 |
DFSチャンネル選択範囲 5GHz(1) |
80MHz |
下測波帯 |
下測波帯 |
低, 中, 高 |
無効 |
100, 116, 132 |
80MHz |
下測波帯 |
上測波帯 |
低, 中, 高 |
無効 |
108, 124, 140 |
80MHz |
上測波帯 |
下測波帯 |
低, 中, 高 |
無効 |
104, 120, 136 |
80MHz |
上測波帯 |
上測波帯 |
低, 中, 高 |
無効 |
112, 128, 144 |
40MHz |
下測波帯 |
- |
低, 中, 高 |
無効 |
100, 108, 116, 124, 132, 140 |
40MHz |
上測波帯 |
- |
低, 中, 高 |
無効 |
104, 112, 120, 128, 136, 144 |
20MHz |
- |
- |
低, 中, 高 |
無効 |
100, 104, 108, 112, 116, 120, 124, 128, 132, 136, 140, 144 |
8. 設定例
8.1. 設定方法
-
[無線設定] - [共通] - [基本無線設定]
[無線設定] - [個別] - [詳細設定] - [基本無線設定]-
[無線LANの使用場所]
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[2.4GHz、5GHz(1)の使用場所]: 「屋内で使用する」
無線設定 - 共通 - 基本無線設定 - 無線LANの使用場所
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-
[無線機能]
-
[5GHz(1)]: 「使用する」
無線設定 - 共通 - 基本無線設定 - 無線機能 5GHz(1)
-
-
[5GHz(1) 基本]
-
[チャンネル]: 「自動」またはW53, W56のチャンネル
無線設定 - 共通 - 基本無線設定 - 5GHz(1) 基本: チャンネル 自動無線設定 - 共通 - 基本無線設定 - 5GHz(1) 基本: チャンネル 固定チャンネルを固定にした場合、Fast DFS v2機能が停止した後にチャンネルが自動的にW53やW56に戻ることはありません。
W52チャンネルになった後に自動的にW53, W56に戻すため、チャンネルを「自動」にすることを推奨します。 -
[自動チャンネル選択範囲]:
-
[チャンネル]が「自動」の場合のみ設定可能。
-
「モデル毎の推奨値を使用する」を選択する場合、無線APによって決められたチャンネルが対象となる。
無線設定 - 共通 - 基本無線設定 - 5GHz(1) 基本: 自動チャンネル選択範囲 推奨値 -
「手動で指定する」を選択する場合は、必ずW53またはW56のチャンネルを含めること。
無線設定 - 共通 - 基本無線設定 - 5GHz(1) 基本: 自動チャンネル選択範囲 手動指定
-
-
[チャンネルの自動再選択]: 「状況に応じて定期的に再選択する」(時刻は任意)
-
[チャンネル]が「自動」の場合のみ設定可能。
-
チャンネルがW52になった後に自動でW53, W56に戻すために設定する。
無線設定 - 共通 - 基本無線設定 - 5GHz(1) 基本: チャンネルの自動再選択 -
-
-
-
[無線設定] - [共通] - [SSID 管理]
-
[VAP (仮想アクセスポイント)] - [ステータス]: 「有効」
無線設定 - 共通 - SSID 管理 - VAP (仮想アクセスポイント) -
[VAP N 設定](Nは任意の有効なVAP番号)
-
[バインドする無線モジュール]: 「5GHz(1)」をチェック
無線設定 - 共通 - SSID 管理 - VAP N 設定: バインドする無線モジュール 5GHz(1)-
VAPが複数ある場合、「5GHz(1)」をバインドしたVAPは1つ以上あればよい。
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-
-
-
[管理機能] - [見える化機能]
-
[基本設定]
-
[見える化機能の動作モード]: 「低」
管理機能 - 見える化機能 - 基本設定
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8.2. 確認方法
現在の設定でFast DFS v2機能が有効かどうかは、WebGUIの以下のページで確認することができます。
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[トップ]
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[無線情報 5GHz(1)] - [Fast DFS v2]
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[保守] - [システム / ステータス情報]
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[無線情報 5GHz(1)] - [Fast DFS v2]
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無効になる設定をしている場合や、設定送信直後などで無線の各チャンネルをスキャン中の場合は、本機能が無効であることとその理由が表示されます。
9. SYSLOGメッセージ一覧
以下の文書を参照してください。