Security Gateway and IPsec release 3


鍵交換とSAの管理


作成日1999/Jul/23
最終変更日2018/Nov/06
文書サイズ5.4KB


このドキュメントでは、鍵交換とSAの管理について、基本的な動作を説明する。

  1. 鍵交換の始動
  2. SAの状態表示
  3. SAの更新
  4. 鍵交換の失敗


1. 鍵交換の始動

鍵交換を始動するときには、従来のコマンドでは、 ipsec refresh saというコマンドを実行する。しかし、新しいコマンド仕様では、 ipsec refresh saコマンドで、鍵交換を始動することはできず、 鍵交換のタイミングは、完全に自動化されている。 ただし、ユーザが鍵交換を制御する方法として、 ipsec auto refreshコマンドを使うことができる。 このコマンドの設定がoffのときには鍵交換をこちらから始動することはない。

ipsec auto refreshコマンドの設定がonのときには、必要に応じて、 自動的に鍵交換が始動される。必要に応じて、というのは、 設定されたipsec tunnelコマンドや、 ipsec transportコマンドに相当するSAが存在しないときを意味する。 必要なSAが既に存在するときには、鍵交換を始動しない。


2. SAの状態表示

鍵交換が終了すると、SAが作成される。作成されたSAの状態は、 show ipsec saコマンドで知ることができる。このコマンドの表示は、 以下のようになる。

SA[4] 寿命: 124秒
相手ホスト: 192.168.111.218, 送受信方向: 送受信
プロトコル: IKE
SPI: b9 2c 6f e9 56 4b 66 97 52 8f 0d e1 60 e2 33 95
鍵 : eb fc 81 25 04 ee b7 e8
----------------------------------------------------
SA[5] 寿命: 126秒
相手ホスト: 192.168.111.218, 送受信方向: 送信
プロトコル: ESP (モード: tunnel)
アルゴリズム: DES-CBC (認証: none)
SPI: b3 84 c6 02
鍵 : 85 78 23 e0 2f 89 37 49 4a 69 17 ac 88 92 df ca
----------------------------------------------------

最初に表示される「SA[4]」などの表示は、 SAの管理番号を表している。これらの番号は、 syslogで表示されるものと同じである (「IPsecリリース3のIKEのログ出力」を参照)。 寿命は、秒で計測される「秒寿命」と、 処理したバイト数で計測される「キロバイト寿命」が表示される。 ただし、キロバイト寿命は、ネゴシエーションされていないときには表示されない。


3. SAの更新

寿命が少なくなったSAは更新される。ただし、寿命が少ないSAが存在しても、 他に代わりとなるSAがあれば、更新されることはない。 寿命が少なくなったと判断されるのは、元の寿命に対して、 残りの寿命が1/4以下になったときである。

更新されても、古いSAがすぐに消されることはなく、寿命が尽きるまで存在する。 RTでは、寿命の長いSAを優先的に使うため、古いSAは使われないで、 そのまま放置される。

なお、例外的な処理として、キロバイト寿命が少なくなった場合には、 秒寿命は強制的に小さな値に変更される。なぜならば、 SAが更新されると新しいSAが優先的に使われるため、 古いSAのキロバイト寿命が減らず、 いつまでも古いSAが消滅しないことがあるためである。


4. 鍵交換の失敗

鍵交換は、何度かのメッセージの交換によって終了する。しかし、 何らかの理由で、メッセージが破棄されることもあるので、 メッセージは再送される。再送の回数と間隔は、 ipsec ike retryコマンドで設定することができる。

再送の回数が設定された回数を超えたら、 その対地に対する通信路が落ちたものと判断し、鍵交換を休止する。ただし厳密には、 実行中の鍵交換のすべてについて個別に回数を計っているので、 複数の鍵交換が同時に進行している場合には、直ちに休止しないことがある。

休止した鍵交換は、以下のいずれかの条件で復帰する。