$Date: 2024/03/29 17:41:10 $
カスタムGUIとは、ルーターの設定を行うためのGUI (WWWブラウザに対応するユーザインタフェース) をユーザが独自に設計し組み込むことができる機能です。ルーターにはホストからHTTPで設定を転送するためのインタフェースが用意されており、ユーザはJavaScriptを使用してGUIを作成します。
ヤマハルーターにはWeb GUIが搭載されていますが、ユーザごとに設定画面を変更することはできませんでした。本機能では、カスタムGUIを複数組み込み、ログインするユーザによって画面を切り替えることが可能です。
本ドキュメントでは、最初にGUIデータの保存先について記述し、保存した複数のデータをログインユーザごとに切り替えるための設定方法を解説します。続いて、具体的なカスタムGUIの作成方法について説明し、最後に本機能で使用するコマンド一覧を掲載します。
ヤマハRTシリーズでは以下の機種およびファームウェアで、カスタムGUIをサポートしています。
機種 | ファームウェア |
---|---|
RTX1300 | すべてのリビジョン |
RTX1220 | |
RTX830 | |
NVR510 | |
NVR700W | |
RTX1210 | |
FWX120 | |
RTX810 | |
NVR500 | |
RTX1200 | Rev.10.01.16以降 |
SRT100 | Rev.10.00.52以降 |
本機能では、作成したGUIデータ (HTMLファイルなど) の保存先としてルーターの内蔵フラッシュROM (RTFS) または外部メモリを使用することができます。httpd custom-gui userコマンドでユーザごとに基点となるディレクトリを設定する場合、絶対パスもしくは環境変数PWDを用いた相対パスを入力します。絶対パスと相対パスの具体的な指定方法についてはRTFSの外部仕様書を参照してください。
WWWブラウザからルーターのトップページにアクセスするとBasic認証のダイアログが表示されます。ここで入力するユーザ名に応じてブラウザに出力するGUIを変更させることができます。以下では、具体例を挙げてルーターの設定方法と動作を解説します。
カスタムGUIを使用するユーザとしてuser1、user2、user3、無名ユーザの4名を登録し、各ユーザの基点となるディレクトリを以下の表のように設定します。
ユーザ名 | メディア | 基点となるディレクトリ |
---|---|---|
user1 | 内蔵フラッシュROM (RTFS) | /gui/user1 |
user2 | 内蔵フラッシュROM (RTFS) | /gui/user2 |
user3 | USBメモリ | usb1:/gui/user3 |
無名ユーザ | 内蔵フラッシュROM (RTFS) | /gui/anonymous |
最初にlogin userコマンドでログインユーザの登録を行います。無名ユーザを登録する必要はありません。
# login user user1 user1 # login user user2 user2 # login user user3 user3
次に、各ユーザが使用するGUIデータをhttpd custom-gui userコマンドで設定します。
ユーザuser1は内蔵フラッシュROM (RTFS) の/gui/user1を使用するので、directoryに/gui/user1を指定します。indexには「/ (スラッシュ)」止めのURLでアクセスした場合に表示するファイル名を指定します。ここではdefault.htmlとしておきます。
# httpd custom-gui user user1 directory=/gui/user1 index=default.html
ユーザuser2の場合も同様に設定します。
# httpd custom-gui user user2 directory=/gui/user2 index=default.html
無名ユーザの場合はユーザ名を省略します。
# httpd custom-gui user directory=/gui/anonymous index=default.html
setコマンドを使用してディレクトリに相対パスを指定する場合は以下のようになります。
# set PWD=/gui # httpd custom-gui user user1 directory=user1 index=default.html # httpd custom-gui user user2 directory=user2 index=default.html # httpd custom-gui user directory=anonymous index=default.html
ユーザuser3はUSBメモリ内のデータを使用するので、以下のようになります。
# httpd custom-gui user user3 directory=usb1:/gui/user3 index=default.html
以上に加えて、以下の設定が必要となります。
IPアドレスが192.168.100.1であるルーターのトップページ (http://192.168.100.1/) にアクセスし、各ユーザ名でログインした場合の動作を解説します。
トップページの認証ダイアログからユーザuser1でログインすると、http://192.168.100.1/custom/user1/にリダイレクトされ、/gui/user1/default.htmlが出力されます。
/custom/user1以下の他のURLにアクセスした場合は、/gui/user1を基点としてファイルが参照されます。以下に例を挙げます。
URL | 参照されるファイルパス |
---|---|
http://192.168.100.1/custom/user1/nat/ | /gui/user1/nat/default.html |
http://192.168.100.1/custom/user1/tunnel/template.html | /gui/user1/tunnel/template.html |
ユーザuser2、user3の場合も同様となります。なお、無名ユーザの場合のURLはhttp://192.168.100.1/custom/anonymous.user/となります。
httpd custom-gui userコマンドが設定されているユーザがルーターに内蔵されている通常のGUIにアクセスすることはできません。URLを直接入力して通常のGUIにアクセスしても、カスタムGUIへはリダイレクトされず認証エラーとなります。
ユーザごとのカスタムGUIを表示するには一般権限 (ユーザ名+ログインパスワード) でログインする必要があります。管理権限 (ユーザ名+管理パスワード) では表示することができません。
CUIのコマンドで管理権限が必要な操作をカスタムGUIから行う場合は、一般権限でのログインに続いて管理権限でログインする必要があります。詳しくは、ホストからルーターへの設定転送で解説します。
ルーターの設定を行うためのGUIを作成する方法について解説します。なお、HTTPプロトコルやHTML、JavaScriptについて基本的な知識を持っていることが前提となります。
PCなどのホストからルーターへの設定転送は、/custom/executeに対してPOSTメソッドをリクエストすることで行います。設定内容はPOSTメソッドのコンテント部分に記述します。データ形式は、CUIで使用するルーターのコマンドを1つずつ改行コードで区切ったものとなります。改行コードはCRLFです。
Internet Explorer 8からルーターにリクエストを送信した場合の例を以下に示します。
POST /custom/execute HTTP/1.1 Accept: */* Accept-Language: ja Referer: http://192.168.100.1/custom/anonymous.user/ Content-Type: text/plain Accept-Encoding: gzip, deflate User-Agent: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/4.0; SLCC2; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; Media Center PC 6.0; .NET4.0C; .NET4.0E; InfoPath.3) Host: 192.168.100.1 Content-Length: 69 Connection: Keep-Alive Cache-Control: no-cache Authorization: Basic Og== #2450035272 ip lan2 address 10.0.0.1/8 syslog debug on show config
コンテント部分の1行目はセッションIDです。これはGUIデータの取得時にルーターから提供される値で、セキュリティ上の理由 (CSRF対策) から必ずコンテント部分の先頭行に記述しなければなりません。この値が存在しなかったり、ルーターの保持する値と一致しなかったりした場合は設定が反映されず、506 CGI Permission Deniedがサーバから返されます。この値の取得方法についてはGUIのサンプルで解説します。
管理者権限が必要なコマンドを含むリクエストを送信した場合コマンドは実行されず、認証ダイアログが表示されます。ここで改めて管理者権限でログインする必要があります。
コマンドを実行した結果はPOSTリクエストのリプライとして、テキスト形式でルーターから送信されます。内容は、CUIからコマンドを入力した場合に出力されるメッセージと同一です。例えば、show configを実行すれば設定されているコマンド一覧が表示されます。また、間違ったコマンドを入力すればエラーメッセージが表示されます。
実行結果を取得する際にエコーバックのON/OFFを選択することができます。エコーバックONの場合には入力したコマンドと実行結果の両方が出力されます。エコーバックOFFの場合には実行結果のみ出力されます。エコーバックOFFで、実行結果として表示する内容が無い場合は何も出力されません。
エコーバックはデフォルトでOFFになっています。ONにする場合は、POSTリクエストのコンテント部分2行目 (セッションIDの次の行) に#echoback=onと記述します。
ホストからルーターへの設定転送で例として送信したリクエストに対するリプライを、エコーバックON/OFFそれぞれの場合で以下に示します。
入力したコマンドと出力内容がすべて転送されます。
HTTP/1.0 200 OK Date: Sun, 18 Oct 2009 21:40:42 GMT Expires: Sun, 18 Oct 2009 21:40:42 GMT Server: YAMAHA-RT Allow: HEAD, GET, POST Content-Type: text/plain;charset=shift_jis # ip lan2 address 10.0.0.1/8 # syslog debug on # show config # RTX1200 Rev.10.01.16 (Tue Sep 29 15:44:22 2009) # MAC Address : 00:a0:de:37:b5:04, 00:a0:de:37:b5:05, 00:a0:de:37:b5:06 # Memory 128Mbytes, 3LAN, 1BRI # main: RTX1200 ver=b0 serial=D26009558 MAC-Address=00:a0:de:37:b5:04 MAC-Address=00:a0:de:37:b5:05 MAC-Address=00:a0:de:37:b5:06 # Reporting Date: Oct 19 06:40:42 2009 login password * administrator password * login user user1 * ip lan1 address 192.168.0.1/24 ip lan2 address 10.0.0.1/8 syslog debug on httpd custom-gui user user1 directory=/gui/user1 index=default.html #
show configの出力内容のみが転送されます。
HTTP/1.0 200 OK Date: Sun, 18 Oct 2009 21:40:42 GMT Expires: Sun, 18 Oct 2009 21:40:42 GMT Server: YAMAHA-RT Allow: HEAD, GET, POST Content-Type: text/plain;charset=shift_jis # RTX1200 Rev.10.01.16 (Tue Sep 29 15:44:22 2009) # MAC Address : 00:a0:de:37:b5:04, 00:a0:de:37:b5:05, 00:a0:de:37:b5:06 # Memory 128Mbytes, 3LAN, 1BRI # main: RTX1200 ver=b0 serial=D26009558 MAC-Address=00:a0:de:37:b5:04 MAC-Address=00:a0:de:37:b5:05 MAC-Address=00:a0:de:37:b5:06 # Reporting Date: Oct 19 06:40:42 2009 login password * administrator password * login user user1 * ip lan1 address 192.168.0.1/24 ip lan2 address 10.0.0.1/8 syslog debug on httpd custom-gui user user1 directory=/gui/user1 index=default.html
ヤマハルーターのHTTPサーバでは、同一のIPアドレスから複数のユーザが同時にログインできないようになっています。このため、一旦あるユーザがログインした後に同一のホストから他のユーザがログインするためには、ログインタイマが満了するまで待つかログアウトの処理を行わなければなりません。
カスタムGUIでログアウト処理を行うには、コンテント部分の1行目にセッションIDを、2行目に#logoutと記述したPOSTリクエストを/custom/executeに送信します。正しくログアウトできれば、200 OKがサーバから返されます。
注意点として、ログアウト処理後はすぐにブラウザを終了させてください。続けて他のページにアクセスすると、再びログインの処理が行われてしまいます。
以下のコマンドをカスタムGUIから実行することはできません。
カスタムGUIはCUIのコマンドを利用することが前提となっているため、ルーターのほぼすべての機能に関して設定や状態参照をすることが可能です。しかし、統計情報についてはCUIのコマンドではデータを取得できず、Web GUIの「統計情報」のページからグラフを表示するか、外部メモリにデータを書き出す必要があります。
このような事情から、インラインフレームなどを使ってカスタムGUIに組み込むことを想定した専用の統計情報ページを用意しています。Web GUIの「統計情報」ページでは複数のグラフが一度に表示されますが、カスタムGUI専用の統計情報ページではURLパラメータを指定することで、特定のグラフのみを取得することができます。
URLの指定方法は以下のようになります。
http://(ルーターのIPアドレス)/custom/stat_graph.html?type=type[&span=SPAN][&if=INTERFACE][&class=CLASS]
typeパラメータにはグラフの種類を指定します。設定値と意味は以下の通りです。
設定値 | 意味 |
---|---|
cpu | CPU利用率 |
memory | メモリー利用率 |
flow | ファストパスのフロー数 |
route | 経路数 |
nat | NATエントリー数 |
filter | ポリシーフィルターまたは動的フィルターのセッション数 |
traffic | トラフィック統計 |
qos | QoS統計 |
spanパラメータにはデータの取得間隔を指定します。取得できるデータの最大数は一定なので、間隔を指定することで取得期間も決定されます。設定値と意味は以下の通りです。
設定値 | 意味 |
---|---|
1s | 1秒間隔、過去2分間 |
1m | 1分間隔、過去2時間 |
12m | 12分間隔、過去1日間 |
6h | 6時間間隔、過去30日間 |
ifパラメータにはlan1、pp1、tunnel1などのインタフェース名を指定します。
classパラメータにはQoSのクラスを指定します。
span、if、classの各パラメータについては、typeパラメータの設定値によって指定しなければならないものが変わります。対応関係は以下の通りです。
typeパラメータの設定値 | 必要となるパラメータ |
---|---|
cpu、memory、flow、route、filter | span |
nat、traffic | span、if |
qos | if、class |
typeがQoS統計の場合の取得期間は10秒間隔、過去20分間固定となります。
ルーターのトップページにアクセスしてから、設定を転送し、実行結果を取得するまでのシーケンスは以下のようになります。
+----------+ +----------+ | ホスト | | ルーター | +-----+----+ +-----+----+ | | | http://192.168.100.1/にアクセスし、ログイン | |---------------------------------------------------->| | | | http://192.168.100.1/custom/user/にリダイレクト | |<----------------------------------------------------| | | | /custom/executeに設定をPOST | |---------------------------------------------------->| | | | 実行結果を送信 | |<----------------------------------------------------| | |
カスタムGUIのサンプルを紹介します。なお、JavaScriptやHTMLについての詳しい情報は、参考書や解説サイトなどを参照してください。
サンプルファイルはこちらです。シナリオとしては、拠点側ルーターをPPPoEでインターネットに接続し、センター側ルーターとIPsecでトンネルを張るというものです。
/custom/execute (REST API) に設定をPOSTするには、CSRF対策のためにセッションIDを付加しなければなりません。PerlやRubyなどの言語を使って作成した簡易的なHTTPクライアントからルーターの設定を行おうとする場合、セッションIDを取得するためにJavaScriptのエンジンを搭載する必要がありますが、これは容易ではありません。
本機能ではWWWブラウザ以外のHTTPクライアントから設定を行うことを考慮して、セッションIDを付加する必要のないREST APIを別途用意しています。URLは/custom/apiとなります。
このAPIを使用するには、以下の設定が必要となります。
HTTPクライアントが/custom/apiに対してルーターの設定コマンドをPOSTする場合には、httpd custom-gui api passwordコマンドで設定したパスワードをURLパラメータで指定します。
例としてパスワードがdoremiの場合のURLは以下のようになります。
http://(ルーターのIPアドレス)/custom/api?password=doremi
このURLにアクセスする場合、Basic認証は必要ありません。また、前述の通りセッションIDを必要とせずCSRF対策が行われていないため、ブラウザからはアクセスしないでください。
なお、/custom/apiに対するリクエストでエコーバックをONにするには、コンテント部分の1行目に#echoback=onと記述します。
/custom/executeに対して日本語などのマルチバイト文字を含むコマンド (descriptionコマンドなど) をPOSTした場合、下記の表に記載のリビジョン以降のファームウェアでないとコマンドが正しく実行されない可能性があります。これは、XMLHttpRequestを使用してマルチバイト文字を送信する場合の文字コードは通常UTF-8になりますが、下記の表に記載のリビジョン以前のファームウェアではPOSTされたデータをShift_JISとして処理してしまうためです。
機種 | ファームウェア |
---|---|
NVR500 | Rev.11.00.16以降 |
RTX1200 | Rev.10.01.32以降 |
SRT100 | Rev.10.00.60以降 |
なお、上記の表に記載されていない機種については、対応機種とファームウェアリビジョンに記載のリビジョンから、POSTされたマルチバイト文字をUTF-8として処理するようになっており、この問題が発生することはありません。
/custom/apiに対して日本語などのマルチバイト文字を含むコマンド (descriptionコマンドなど) をPOSTする場合は、クライアント側で文字コードがShift_JISとなるように設定してください。
外部メモリのファイル操作では日本語を含むファイル名やディレクトリ名を指定することが可能ですが、本機能ではURLに日本語が含まれている場合、正しく動作しません。
レベル | 出力メッセージ | 意味 |
---|---|---|
INFO | Login succeeded for HTTP: IP_ADDR USER_NAME | IPアドレスがIP_ADDRであるユーザUSER_NAMEがルーターのHTTPサーバにログインした。 |
'administrator' succeeded for HTTP: IP_ADDR USER_NAME | IPアドレスがIP_ADDRであるユーザUSER_NAMEが管理ユーザに昇格した。 | |
Logout from HTTP: IP_ADDR USER_NAME | IPアドレスがIP_ADDRであるユーザUSER_NAMEがルーターのHTTPサーバからログアウトした。 | |
DEBUG | [CUSTOM_GUI] Execute 'COMMAND' | カスタムGUI機能でコマンドCOMMANDを実行した。 |