L2MS (Layer2 Management Service)


1 機能概要

L2MS (Layer2 Management Service)とは、ヤマハネットワーク機器をレイヤー2レベルで管理する機能です。
L2MSは集中制御を行う1台のL2MSマスターと、L2MSマスター(以下マスターと略す)から制御される複数台のL2MSスレーブ(以下スレーブと略す)で構成されます。
SWX2310P/SWX3100/SWX3200は、マスター、スレーブどちらになることも可能です。

以下にPC、マスターおよびスレーブの接続方法を示します。

PCからマスターにはシリアル接続やTELNET、HTTPでログインします。
マスターには、スレーブの管理を行うためのコマンドや、スレーブの設定や状態取得を行うためのWeb GUIが用意されており、これらを利用してスレーブの操作を行います。
マスターとスレーブはイーサネットケーブルで接続し、通信には独自プロトコルを使用します。

本機能は次のような特徴を持っています。


L2MSで用いられる独自プロトコル通信は、ヤマハルーターやSWX2200シリーズなどが対応しているスイッチ制御機能に用いられている通信と同じプロトコルです。
従って、マスターからSWX2200シリーズやWLXシリーズを管理することができます。


2 用語の定義

マスター

L2MSおよびスイッチ制御機能のスレーブとして動作している、ヤマハネットワーク機器を管理する機器。
ネットワーク内のヤマハスイッチ、ヤマハ無線APを管理する。

スレーブ

L2MSおよびスイッチ制御機能のマスターによって管理されるヤマハスイッチ、およびヤマハ無線AP。
マスターから設定の確認や変更を行うことができる。


3 機能詳細

3.1 対応機種

SWX2310P/SWX3100/SWX3200は、L2MSのマスター、スレーブどちらになることも可能です。

マスターとして動作させる場合、1台のマスターで 最大64台 のスレーブを制御することができます。
スレーブとして管理できる機種は以下の通りです。
前述のとおり、スイッチ制御機能(スレーブ)に対応している機器も制御することができます。

スレーブとして動作させる場合、 ヤマハルーターもしくはヤマハスイッチのマスターから管理されます。
ヤマハルーターの対応機種については、ヤマハルーターのスイッチ制御機能 を参照してください。

3.2 使用方法

L2MS動作および役割を、 l2ms コマンドによって設定します。

show l2ms コマンドで現在の動作や役割を確認することができます。

尚、 l2ms enable コマンド、および、 l2ms role コマンドの変更を適用するためには、システムを再起動する必要があります。

3.3 L2MSのプロトコル

L2MSの制御には以下に示す独自プロトコルのL2フレームを使用します。

マスター と スレーブとの間にファイアーウォールを設置する場合は、ファイアーウォールにこのL2フレームを通過させる設定を行う必要があります。

3.4 スレーブの監視

マスターは定期的に探索フレームを送信することで配下のスレーブを監視します。
また、スレーブは探索フレームに対して応答フレームを送信することでマスターに自身の存在を通知します。

探索フレームの送信時間間隔は、 slave-watch interval コマンドで設定します。
設定値を大きくすると、送信頻度は減りますが、スレーブを接続してからマスターが認識するまでの時間は長くなります。
設定値を小さくした場合はその逆となり、送信頻度は増えますが、スレーブを接続してからマスターが認識するまでの時間は短くなります。

マスターが探索フレームを一定回数送信してもスレーブから応答フレームを受信しない場合、当該のスレーブはダウンしたと判断します。
回数は slave-watch down-count コマンドで設定します。
また、スレーブを接続しているイーサネットケーブルを抜いた場合は当コマンドの設定よりも早いタイミングでスレーブがダウンしたと判断することがあります。

使用するネットワーク環境に合わせて slave-watch interval および slave-watch down-count コマンドに適切な値を設定してください。

3.5 スレーブの占有

1つのスレーブを複数のマスターが同時に制御することはできません。
このため、マスターは同一ネットワーク内に1台となるように設定してください。

スレーブが起動後に探索フレームを受信すると、当該スレーブは探索フレームを送信したマスターに管理された状態となります。
この状態は、以下のいずれかの条件により解除されます。

3.6 スレーブの操作

L2MSに対応したスレーブに対して、マスターから設定を行ったり、動作状態を取得したりすることを「スレーブを操作する」と言います。
スレーブを操作するためには、Web GUIのLANマップを使用します。
マスターのWeb GUIにログインしたのち、LANマップにて対象のスレーブを選択して操作してください。

LANマップでの詳しい操作方法は、Web GUIのヘルプページを参照してください。

SWX2310P/SWX3100/SWX3200(マスター)からコマンドを用いてスレーブを操作することはできませんので、ご注意ください。

LANマップから行える、各スレーブに対する操作について説明します。

3.6.1 SWX2100シリーズに対する操作

SWX2100シリーズ(SWX2100-8G、SWX2100-16G、 SWX2100-24G、SWX2100-5PoE、SWX2100-10PoE )に対して、以下の操作を行うことができます。

3.6.2 SWX2200シリーズに対する操作

SWX2200シリーズ(SWX2200-8G、SWX2200-24G、SWX2200-8PoE)に対して、以下の操作を行うことができます。

マスターからSWX2200の設定を行うと、設定内容がマスターとSWX2200の両方に保存されます。

設定は、マスターのCONFIGファイルとは別のファイルとして保存されますが、
startup-config select コマンドによって、CONFIGと共に切り替えることが可能です。

SWX2200がマスターに管理されている場合は、マスターとSWX2200が保持している設定内容が常に同期しています。
設定の同期については「3.6.5. 設定の同期」を参照してください。

マスターが管理しているSWX2200に対する設定状態は show l2ms slave-config コマンドで確認できます。

3.6.3 SWX2300/SWX2310P/SWX3100/SWX3200シリーズに対する操作

スレーブに対して、以下の操作を行うことができます。

HTTP Proxy機能を有効にすることで、マスターのLANマップからスレーブのGUIにログインすることができます。
スレーブにログインする際にユーザー名およびパスワードの入力が不要となります。

ネットワーク内でスレーブのIPアドレスが他の機器と重複していると、HTTP Proxy機能によるスレーブGUIへのログインが行えません。
その場合はマスターのLANマップにて、スレーブのIPアドレスの設定を変更してください。
詳しくは「3.6.6. HTTP Proxy機能およびIPアドレスの設定について」を参照してください。

3.6.4 WLXシリーズに対する操作

WLXシリーズ (WLX202、WLX302、WLX313、WLX402) に対して、以下の操作を行うことができます。

WLXシリーズは、1度も設定がされていない状態でマスターに管理されると、自動的にDHCPクライアントの設定が行われます。
詳しくは「3.6.6. HTTP Proxy機能およびIPアドレスの設定について」を参照してください。

3.6.5 設定の同期

マスターでSWX2200を管理している場合、マスターとSWX2200が保持している設定内容は常に同期しています。
同期はマスターからSWX2200への一方向であり、SWX2200は常にマスターが保持している設定で動作します。

マスターがSWX2200を管理し始める場合、最初にマスターとSWX2200の設定内容が一致しているかどうかを調べます。
一致していない場合は以下の処理が行われます。

  1. SWX2200の全設定を初期値に戻す
  2. マスターが保持している機能の設定値を、SWX2200に転送する

マスターは配下のSWX2200の設定内容を定期的に監視しており、マスターが保持している設定との不整合を検出した場合に同期処理を行います。

同期処理には時間を要することがあります (数十秒~数分)。
同期処理中のSWX2200に対しては他の操作を行うことができません。
設定を行おうとするとエラーとなり、設定はマスターおよびSWX2200に反映されません。

3.6.6 HTTP Proxy機能およびIPアドレスの設定について

SWX2300/SWX2310P/SWX3100/SWX3200シリーズ、および、WLXシリーズについて以下の動作を行います。

工場出荷の状態や cold start コマンド実行直後は、固定のIPアドレスが設定されています。(L2MSはスレーブとして動作する)
この時、マスターに管理されると、 自動的にDHCPクライアントの設定が行われます。

これは、スレーブが複数 存在した場合に、IPアドレスが重複することを回避するためです。
IPアドレスは、ネットワーク内のDHCPサーバーから配布されるので、スレーブの設定を行うことなく、HTTP Proxy経由でスレーブのWeb GUIへアクセスすることができます。
ネットワーク内にDHCPサーバーが存在しない場合 、IPアドレスが取得できませんので、マスターのLANマップにて、スレーブのIPアドレスの設定を行ってください。
設定が行われ、スタートアップコンフィグが保存されれば、以後、自動的にDHCPクライアントに設定されることはありません。

3.7 スレーブからの情報通知

マスターに管理されているスレーブは、自身の状態が変化したり異常を検出したりすると、マスターに情報を通知します。

スレーブからの情報は、マスターのSYSLOGやLANマップに出力されます。
SYSLOGに出力されるメッセージの詳細は「7. SYSLOGメッセージ一覧」を参照してください。

各スレーブが通知する情報は以下のとおりです。

3.8 接続端末の監視

マスターに terminal-watch enable コマンドを設定すると接続端末の監視機能が有効になり、マスター、およびスレーブに接続されている端末の情報を管理することができます。
マスターが管理する接続端末の情報は以下のとおりです。

これらの情報は、 show l2ms detail コマンドで参照することができます。

本機能による端末の推奨管理台数は、ネットワーク構成に関わらず、 200台まで です。
ネットワーク内に推奨管理台数を超える端末が存在する場合、Web GUIのLANマップの動作が重くなったり、応答しなくなることがありますので、ご注意ください。


マスターはネットワークの変化に応じて、接続されている端末の検索や管理している端末情報の削除を行います。

マスターが接続されている端末の検索を行うタイミングおよび検索対象は以下のとおりです。
検索の結果、新しい端末の情報が見つかった場合に端末が検出されたと判断します。

また、マスターが端末がネットワークからいなくなったと判断して、管理している端末情報を削除するタイミングおよび削除対象は以下のとおりです。


4 関連コマンド

関連コマンドについて、以下に示します。
詳細は、コマンドリファレンスを参照願います。


5 コマンド実行例

5.1 スレーブの監視設定

スレーブの監視時間間隔を設定します。

L2SW(config)#l2ms configuration
L2SW(config-l2ms)#slave-watch interval 8

スレーブのダウン検出を判断する回数を設定します。

L2SW(config)#l2ms configuration
L2SW(config-l2ms)#slave-watch down-count 7

5.2 端末の管理機能の設定

端末の監視機能を有効にします。

L2SW(config)#l2ms configuration
L2SW(config-l2ms)#terminal-watch enable

端末情報の取得時間間隔を設定します。

L2SW(config)#l2ms configuration
L2SW(config-l2ms)#terminal-watch interval 3600

マスターが取得した端末情報を表示します。

Yamaha>show l2ms detail
Role : Master

[Master]
 Number of Terminals   : 0

[Slave]
 Number of Slaves      : 2
  [ac44.f230.00a5]
   Model name          : SWX2100-24G
   Device name         : SWX2100-24G_Z5301050WX
   Route               : port2.1
   LinkUp              : 1, 3, 9
     Uplink            : 1
     Downlink          : 3
   Config              : None
   Appear time         : Tue Mar 13 18:43:18 2018
   Number of Terminals : 1
    [bcae.c5a4.7fb3]
     Port              : 9
     Appear time       : Wed Mar 14 14:01:18 2018

  [00a0.deae.b8bf]
   Model name          : SWX2300-24G
   Device name         : SWX2300-24G_S4L000401
   Route               : port2.1-3
   LinkUp              : 1
     Uplink            : 1
     Downlink          : None
   Config              : None
   Appear time         : Tue Mar 13 18:43:18 2018
   Number of Terminals : 0

5.3 L2MS制御フレームの送受信設定

port1.5で、L2MSの制御フレームを送受信しないように設定します。

L2SW(config)#interface port1.5
L2SW(config-if)#l2ms filter enable

5.4 イベント監視機能の設定

イベント監視機能を無効にします。

L2SW(config)#l2ms configuration
L2SW(config-l2ms)#event-watch disable

イベント情報の取得時間間隔を設定します。

L2SW(config)#l2ms configuration
L2SW(config-l2ms)#event-watch interval 60

5.5 ゼロコンフィグ機能の使用の有無

マスターがスレーブに対してゼロコンフィグ機能を行うか設定します。
この設定は、マスターにする必要があります。

ゼロコンフィグ機能を無効にします。

L2SW(config)#l2ms configuration
L2SW(config-l2ms)#l2ms enable
L2SW(config-l2ms)#l2ms role master
L2SW(config-l2ms)#config-auto-set disable

6 注意事項

6.1 機器構成について

マスターとスレーブの間に他社製スイッチを挟み込むなど、L2MSの通信経路上に他社製スイッチが存在すると、スレーブを正しく制御できないことがあります。
他社製スイッチを含めてネットワークを構成する際は、事前に動作確認を行ってください。

スレーブを直列に接続して使用する場合、接続可能なスレーブの最大台数は マスターから数えて8台まで です。
スレーブをマスターから数えて9台以上直列に接続することはできません。
また、直列に接続するスレーブの台数がマスターから数えて8台までであれば、最大制御台数で定められた台数を制御できます。

スレーブをマスターから数えて9台以上直列に接続した場合、L2MSの通信が遅延してスレーブの認識や制御が正しく行えず、以下のような不具合が起こることがあります。

6.2 端末の監視について

ネットワーク内に推奨管理台数を超える端末が存在する場合、Web GUIのLANマップの動作が重くなったり、応答しなくなることがあります。

端末の検索は、対象機器のFDB (MACアドレステーブル)に登録されている情報を用いて行われます。
このため、検索を行うタイミングによっては、端末が接続されているのに検出されなかったり、端末がネットワークからいなくなったのに検出されたりすることがあります。

マスターのポートやヤマハスイッチのポートのリンクダウンが検知された場合、FDB (MACアドレステーブル)に端末が登録されていても、当該ポートに接続されている端末の情報は、全て削除されます。

スレーブがポートに接続されてから、L2MSによってスレーブと認識されるまでに数秒かかる場合があります。
この間、当該スレーブを一つの端末として扱われます。

マスターがスレーブとして管理していないヤマハネットワーク機器は、端末として扱われます。

terminal-watch interval コマンドで設定した時間の経過による端末の検索では、マスター、および全てのスレーブに対して端末の検索を行うため、ネットワークの構成によっては端末の検索が完了するまでに20分~30分程かかる場合があります。
なお、端末の検索が完了するまでの間に他の処理が実行できなくなることはありません。

L2MS対応機器に他社製L2スイッチが接続されている場合、他社製L2スイッチに接続されている端末はL2MS対応機器に接続されている端末として検出されます。
ただし、他社製L2スイッチに端末とヤマハスイッチが並列に接続されている場合、他社製L2スイッチに接続されている端末を検出することはできません。

6.3 他機能との併用について

6.3.1 VLANとの併用

VLANを使用する場合、L2MSの通信が行われるポートはアクセスポートに設定するか、もしくはネイティブVLANが設定されたトランクポートに設定してください。
ネイティブVLANが設定されていないトランクポートでは、L2MSの通信を行うことができません。

6.3.2 ミラーリングとの併用

ミラーリング機能を使用すると、モニターポートで送受信されたL2MSの通信もコピーされます。
このため、ミラーポートにマスターやスレーブを接続するとL2MSが正しく動作しないことがありますので、接続しないでください。

6.3.3 ACLとの併用

L2MSの通信はACLの制御対象にはなりません。
ACLでは、許可リストに設定されていないフレームは破棄されます(暗黙の拒否)が、L2MSの通信は制御対象にならないため、破棄されずに転送されます。

6.3.4 STP、ループ検出機能との併用

STPまたはループ検出機能でブロッキング状態になったポートではL2MSの通信を行うことができません。

STPによるリンクの切替えが行われると、マスターがトポロジーを正しく認識できず、スレーブが発見できなかったり、スレーブを発見したときの経路に誤りが生じることがあります。
そのような場合は、STPによるリンクの切替えが完了したのち、 l2ms reset コマンドを実行して、スレーブの管理をリセットしてください。

複数のMSTインスタンスが動作している場合、L2MSの制御フレームはCIST(インスタンス #0)によって形成される論理経路(ツリー)で送受信されます。

6.3.5 リンクアグリゲーションとの併用

リンクアグリゲーションを使用している場合、L2MSの通信は「論理インターフェースに所属しているポートのうち、リンクアップしている最も小さい番号のポート」で行われているものと見なされます。
また、リンクアグリゲーションと接続端末の監視機能を併用しているときに、論理インターフェースに繋がっている先で端末を発見した場合、端末は「論理インターフェースに所属しているポートのうち、リンクアップしている最も小さい番号のポート」に繋がっているものと見なされ、該当ポート番号が表示されます。

以下の場合は、L2MSの通信がport1.1同士で行われているものと見なされます。


以下の場合は、L2MSの通信がマスターのport1.4とスレーブのport1.5とで行われているものと見なされます。


6.3.6 スタック機能との併用

スタックの1台構成の場合、L2MSは機能しなくなります。


7 SYSLOGメッセージ一覧

L2MSによって出力されるSYSLOGを以下に示します。
出力されるメッセージには、"[ L2MS]"というプレフィックスが付与されます。
マスターとして動作しているときに表示されるSYSLOGには、さらに"経路( ADDR ):"というプレフィックスが付加されます。
ADDR はスレーブのMACアドレスです。


8 関連文書

トップへ戻る