IPv4基本設定
1 機能概要
本製品は、主に保守 (スイッチの設定操作) を行うために 以下に示す IPv4ネットワークの環境設定 に対応します。
IPv4 アドレスの設定
ルート情報の設定
ARP テーブルの設定
MTUの設定
2 用語の定義
IPv4 リンクローカルアドレス
同一のセグメント内でのみ有効なアドレスで 169.254.0.0/16 ~169.254.255.255/16 の範囲のアドレス。
3 機能詳細
3.1 IPv4アドレスの設定
本製品は、 VLANインターフェース に対して、 IPv4アドレスとサブネットマスク を設定することができます。 設定方法としては、 固定設定 、 DHCPによる自動設定 に対応します。
IPv4アドレスの固定/自動設定は、 ip address コマンド で行います。
DHCPによる自動設定を指定した際の動作は、以下となります。
Discover/Requestメッセージに HostNameオプション (オプションコード12)を付加することができます。
DHCPサーバーに対して要求するリース期間は、 72時間固定 となっています。(実際にリースされる期間はDHCPサーバーの設定に依存します。)
自動設定されている状態で no ip address コマンドを実行すると、取得していたIPv4アドレスの解放メッセージをDHCPサーバーに送ります。
DHCPサーバーより取得した情報は、 show dhcp lease コマンドで確認します。
IPv4アドレスは 1つのVLANインターフェース に、 プライマリーアドレスを1個 と、 セカンダリーアドレスを4個 まで設定できます。システム全体 で設定できるIPv4アドレスは 最大8個 までです。 VLANインターフェースに割り振られているIPv4アドレスは、 show ip interface コマンドで確認します。
初期状態では、 デフォルトVLAN (VLAN #1) に固定で 192.168.100.240/24 を設定してあります。
3.2 Auto IP機能
本製品は、IPv4アドレスの設定機能として、MACアドレスをベースにIPv4リンクローカルアドレスを自動生成する Auto IP 機能を提供します。 Auto IP機能は、DHCPサーバーからIPv4アドレスが割り当てられない場合にのみ機能します。(前提として、IPv4アドレス設定がDHCPに設定されていること。) 自動生成したIPv4リンクローカルアドレスは、ARPによりネットワーク上で重複していないか確認します。 アドレスが重複していないことを確認できた場合に生成アドレスの使用を開始します。 なお、Auto IPによりIPv4リンクローカルアドレスが決定した後に、DHCPサーバーからIPv4アドレスが割り当てられた場合、IPv4リンクローカルアドレスを破棄して、DHCP サーバーからのアドレスを使用します。
Auto IP機能の有効化は、 auto-ip enable コマンドで行います。
Auto IP機能は、 1つのVLANインターフェイスのみ有効 です。初期状態では デフォルトVLAN (VLAN #1) が有効となっています。
3.3 ルート情報の設定
本製品は、Syslogメッセージの送信、NTPによる時刻合わせなどのIPv4ホストとして自発的にIPv4パケット送信する際、ルーティングテーブルを参照します。 本製品では、以下の機能を使用して、ルーティングテーブルを操作します。
VLANインターフェースのルート情報の設定
デフォルトゲートウェイの設定
スタティックルート情報の設定
ルート情報の表示
3.3.1 VLANインターフェースのルート情報
本製品は、VLANインターフェースに対してIPv4アドレスを設定すると、ネットワークアドレスとVLAN ID の対応をルート情報として自動で設定します。 VLANインターフェースに対して設定したIPv4アドレスを解放すると、上記設定を削除します。
3.3.2 デフォルトゲートウェイの設定
本製品は、ルーティングテーブルに設定されていないネットワークアドレスに対してIPv4パケットを送信する先をデフォルトゲートウェイとして設定することができます。
デフォルトゲートウェイの設定は、 ip route コマンドで行います。
デフォルトゲートウェイの表示は、 show ip route コマンドで行います。
3.3.3 スタティックルート情報の設定
本製品は、 宛先ネットワークアドレスへのルート(送信するゲートウェイのアドレス) を静的に設定することができます。
スタティックルート情報の設定は、 ip route コマンドで行います。
スタティックルート情報の表示は、 show ip route コマンドで行います。
3.3.4 経路表と経路選択
ルート情報の設定では、以下に示す2種類のテーブル(表)を使用します。
RIB(Routing Information Base:IP経路表)
FIB(Forwarding Information Base:IP転送表)
それぞれの役割は以下のとおりです。
RIB RIB(Routing Information Base:IP経路表)は、各種経路設定の情報を蓄積するデータベースです。
RIBに経路が登録されるのは以下の場合です。
VLANインターフェースにIPv4アドレスを設定したとき
手動によりスタティックルート情報やデフォルトゲートウェイを設定したとき
DHCPメッセージによってデフォルトゲートウェイを学習したとき
RIBの確認は、 show ip route database コマンドで行います。
FIB FIB(Forwarding Information Base:IP転送表)は、IPパケットの転送判断時に参照するデータベースです。 FIBには、RIBに登録されている経路のうち、「最適」と判断され実際にパケット転送に使用される経路だけが登録されます。
最適と判断する条件は以下のとおりです。
該当のVLANインターフェイスがリンクアップしていること
RIBに同一宛先への経路が複数登録されている場合は、以下の優先順位で1つだけ決定する
DHCPメッセージにより学習した経路より、手動設定よる経路を優先
ゲートウェイのIPアドレスの値が最も大きい経路を優先
FIBの確認は、 show ip route コマンドで行います。
3.4 ARP テーブルの設定
本製品は、IPv4パケットを送信する際、ARP (Address Resolution Protocol) を利用して、IPv4アドレスからMACアドレスを取得します。 IPv4アドレス と MACアドレス の対応は、以下の仕様でARP テーブルに保存されます。
ARP テーブルで保存する ARP エントリー は、以下の情報を管理します。
IPv4アドレス
MACアドレス
VLAN インターフェース
ARP テーブルは、動的/静的エントリーあわせて、 最大508エントリー 保存されます。
ARP テーブルに保存された動的エントリーは、初期状態で 300秒 保持する設定になっています。 エントリーの保持時間の変更は、 arp-ageing-timeout コマンドで行います。
ARP テーブルに保存された動的エントリーは、保持時間に関係なく clear arp-cache コマンドでクリアすることができます。
ARP テーブルに対する静的エントリーの設定は、 arp コマンドで行います。最大255件まで登録することができます。
ARP テーブルの確認は、 show arp コマンドで行います。
3.5 MTUの設定
本製品は、 VLANインターフェース に対して、MTUを設定することができます。
MTU値の設定には、 mtu コマンドを使用します。
MTUの初期値は 1500バイト で、 68バイト から 9216バイト までの範囲で設定することができます。 ただし、ipv6 enableが設定されたVLANインターフェースでは、 1280バイト から 9216バイト までの範囲となります。
初期値を除いて最大で7つまで異なるMTU値を設定することができます。
受信したパケットをルーティングする場合、以下の動作となります。
IPv4パケットで、IPv4ヘッダーのTotal Lengthフィールドの値がMTU値を超える場合、分割 (IPフラグメント)して転送します。 DF (Don't Fragment)ビットが付加されたIPv4パケットは、分割 (IPフラグメント)して転送せず、ICMPエラー (Fragmentation needed)を返送してパケットを破棄します。
IPv6パケットで、IPv6ヘッダーのPayload Lengthフィールドの値がMTU値を超える場合、ICMPv6エラー (Packet too Big)を返送してパケットを破棄します。
mru コマンドで設定された受信可能な最大フレームサイズを超えるパケットはルーティングしません。 ジャンボフレームを転送する場合、必要に応じて mru コマンドで受信可能な最大フレームサイズを調整してください。
分割 (IPフラグメント)して転送する場合、ソフトウェアによる転送となるため転送速度が制限され、なおかつCPU使用率の高騰につながります。 転送するジャンボフレームのサイズに応じてmtuコマンドを設定することで、分割 (IPフラグメント)が発生しないようにすることを推奨します。
本製品がパケットを送信する場合、以下の動作となります。
パケットを送信するVLANインターフェースのMTU値に対して、送信するIPv4/IPv6パケットのサイズが大きい場合、MTU値に応じて分割 (IPフラグメント)して送信します。
4 関連コマンド
関連コマンドについて、以下に示します。 コマンドの詳細は、コマンドリファレンスを参照願います。
関連コマンド一覧
機能種別
操作項目
操作コマンド
IPv4 アドレスの設定
IPv4アドレスの設定
ip address
IPv4アドレスの表示
show ip interface
DHCPクライアントによる動的IPv4アドレスの設定
ip address dhcp
DHCPクライアントの状態の表示
show dhcp lease
Auto IP機能の有効/無効設定
auto-ip enable/disable
ルート情報の設定
デフォルトゲートウェイの設定
ip route
デフォルトゲートウェイの表示
show ip route
スタティックルート情報の設定
ip route
スタティックルート情報の表示
show ip route
ルート情報の表示
show ip route
ARP テーブルの設定
ARP テーブルの表示
show arp
動的エントリーの保持時間の設定
arp-ageing-timeout
動的エントリーのクリア
clear arp-cache
静的エントリーの設定
arp
MTUの設定
MTUの設定
mtu
5 コマンド実行例
5.1 IPv4ネットワーク環境の設定 (DHCP)
本製品にIPv4アドレスを設定して、リモート端末からアクセスを行う環境を整備します。
本製品の保守は、デフォルトVLAN (VLAN #1) で行います。
IPv4アドレスは、デフォルトVLAN (VLAN #1) に対して DHCP にて自動で設定します。
VLAN #1 につながれたホストからの Web / TFTP アクセスを許可 します。
現在設定されているIPv4アドレスを確認します。 初期状態のままであれば、固定IPv4アドレス (192.168.100.240/24) が設定されています。
Yamaha#show ip interface brief
Interface IP-Address Status Protocol
vlan1 192.168.100.240/24 up up
デフォルトVLAN (VLAN #1) に対して DHCP を設定します。
Yamaha#configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
Yamaha(config)#interface vlan1
Yamaha(config-if)#ip address dhcp
DHCPサーバー より払い出された情報を確認します。
Yamaha(config-if)#end
Yamaha#show dhcp lease
Interface vlan1
--------------------------------------------------------------------------------
IP Address: 192.168.1.3
Expires: YYYY/MM/DD 05:08:41
Renew: YYYY/MM/DD 19:08:41
Rebind: YYYY/MM/DD 02:38:41
Server:
Options:
subnet-mask 255.255.255.0
default-gateway 192.168.1.1
dhcp-lease-time 72000
domain-name-servers 192.168.1.1
dhcp-server-identifier 192.168.1.1
domain-name xxx.xxxxx.xx.xx
HTTPサーバー、TFTPサーバーに対してデフォルトVLAN (VLAN #1) からのアクセスを許可するように設定します。 設定後、リモートホストからWebアクセスをしてください。
Yamaha(config)#http-server interface vlan1 ... (HTTPサーバーのアクセス許可)
Yamaha(config)#tftp-server interface vlan1 ... (TFTPサーバーのアクセス許可)
6 注意事項
特になし
7 関連文書