DHCPサーバー機能
1. 概要
無線LANに接続するデバイスのうち、特にスマートフォン、タブレットといった端末は、既定ではIPアドレスをDHCPで取得する設定になっています。したがって、これらのデバイスを使用する無線LAN環境では、固定IPアドレスではなくDHCPで動的にIPアドレスを割り振る運用が多いと考えられます。
無線LANをDHCPで運用する場合、DHCPサーバー機能を持ったルーターをDHCPサーバーとして用いる例がよくあります。ただし、既存の有線ネットワークに、後から無線APだけを追加するような場合に、既存のルーターの設定を変更できない諸般の事情があって新たに別途DHCPサーバーを用意しなければならない場合があります。このような場合、APとは別に追加されたルーターが、DHCPサーバーとして作動する構成となりますが、本構成には管理すべき機器が増えることやルーター分のコストがかかるといったデメリットがあります。
本機能を使用することで、別途DHCPサーバーを設けることなく、本APのDHCPサーバー機能から無線端末にIPアドレスを配布できます。
1.1. 特徴
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有線LANにDHCPサーバーが稼働している環境でも、有線LANのDHCPサーバーと共存可能
本製品に搭載されているDHCPサーバー機能を有効にして、IPアドレスの払い出し先を「無線接続端末にのみ払い出す」に設定した場合は、無線LANに接続している無線端末に対してだけIPアドレスを配布します。有線LANの端末にはIPアドレスを配布しません。
このとき、有線LANと無線LANの間のDHCPパケットを遮断し、有線LANのDHCPサーバーを無線LAN端末から隠します。 -
DHCPリレーエージェント
システム上の複数のAPのうち、1台のみをDHCPサーバー、ほかをそのリレーエージェントとして設定できます。
本機能により、無線端末はAP間をローミングしても同じIPアドレスを使い続けることができます。 -
クラスター管理機能による自動構成
DHCPサーバー機能はリーダーAP上の仮想コントローラーで動作します。また、仮想コントローラーから設定を配布すると、フォロワーAPはリレーエージェントとして自動的に設定されます。
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有線LANに接続されている端末に対してもIPアドレスの配布が可能
IPアドレスの払い出し先を「すべての端末に払い出す」に設定した場合は、無線LANに接続している端末に対してだけでなく、有線LANに接続されている端末に対してもIPアドレスを配布できます。このとき、無線LAN側と有線LAN側の両方に対してDHCPパケットを送受信します。
2. 注意事項
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同一VLAN上で本機能と有線LAN上のDHCPサーバーを共存する場合、それらのサーバーから配布するIPアドレスが重複しないようDHCPスコープを適切に設定する必要があります。DHCPスコープは『IPアドレスの範囲』で設定できます。
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同一VLAN上で本機能を使用するAPが複数ある場合、1台だけをDHCPサーバー、ほかをそのリレーエージェントとして設定する必要があります。無線端末の中にはローミングしてもローミング前のIPアドレスを使い続ける場合があるので、IPアドレスの衝突を避けるためには IPアドレスのリース元となるDHCPサーバーを1台に集約すべきです。
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DHCPサーバーが動作可能なVLANは、本製品の管理IPアドレスを割り当てているVLANだけです。
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Web設定ページのDHCPサーバー設定で、誤った入力によりエラーが検出されたとき、設定が変更されてしまう場合があります。エラー検出された後は意図した設定になっているかご確認ください。
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DHCPクライアントに通知されるデフォルトゲートウェイ・DNSサーバーのIPアドレスはLANポートに設定された情報が使用されます。
3. 対応ファームウェアリビジョン
このページで説明する内容は、以下のファームウェアを対象としています。
モデル | ファームウェア |
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WLX212 |
Rev.21.00.02以降 |
WLX413 |
Rev.22.00.01以降 |
WLX222 |
Rev.24.00.01以降 |
WLX322 |
Rev.25.00.02以降 |
WLX323 |
Rev.25.01.02以降 |
4. 詳細
4.1. 構成
以下のような使用環境を想定しています。
4.1.1. 有線LANにDHCPサーバーの存在しない環境で、DHCPを使う無線LAN端末を運用
各APからは、それぞれ当該APに接続している無線端末にだけIPアドレスを割り当てます。
有線側にDHCP端末を接続したとしても、それらの端末からAP上のDHCPサーバーは見えず、IPアドレスは割り当てられません。
また、有線側に既存のDHCPサーバーが稼働していた場合でも、無線端末から既存のDHCPサーバーは見えません。すなわち既存のDHCPサーバーから無線端末に対してIPアドレスは割り当てられません。
4.1.2. 有線LANにDHCPサーバーの存在しない環境で、DHCPを使う有線端末と無線LAN端末を運用
DHCPサーバーの設定で、IPアドレスの払い出し先を「すべての端末に払い出す」に指定したAPからは、無線端末だけではなく有線側の端末に対してもIPアドレスを割り当てます。
4.1.3. 有線LANにDHCPサーバーが存在する環境で、DHCPを使う無線LAN端末を運用
DHCPサーバーの設定で、IPアドレスの払い出し先を「無線接続端末にのみ払い出す」に指定し、VAP設定で、内蔵DHCPサーバーを「使用する」に指定した場合は、無線端末に対してIPアドレスを割り当てます。また、VAP設定で、内蔵DHCPサーバーを「使用しない」に指定した場合は、APからIPアドレスの割り当てを行わず、有線側のDHCPサーバーからIPアドレスが割り当てられます。
すなわち、本APに接続する無線端末が、DHCPによりIPアドレスを取得するとき、VAPの設定によって本機能を利用するか有線LAN側のDHCPサーバーを利用するかを指定できます。
4.2. DHCPスコープ
DHCPサーバーから無線端末へ割り当てるIPアドレスの範囲をDHCPスコープとして設定します。
DHCPスコープは、本製品の管理IPアドレスが割り当てられているのと同じVLANに1個だけ設定できます。
DHCPスコープに指定したIPアドレスの範囲内に固定のIPアドレスを設定した端末が存在する場合、IPアドレスの重複が発生する恐れがあります。
重複を防ぐために端末に配布したくないIPアドレスやIPアドレスの範囲を、払い出しアドレスの除外範囲として設定することができます。
払い出しアドレス除外範囲は、DHCPスコープ内に10個まで設定できます。
4.3. 動作モード
本機能の動作モードとして、DHCPサーバーモードとリレーエージェントモードを選択します。
DHCPサーバーモードはIPアドレスのリース元のサーバーとして動作するモード、リレーエージェントモードはリース元のサーバーと無線端末の間でDHCPを中継するモードです。リレーエージェントモードにより、同一VLAN上に本機能を有効にした複数のAPがある場合でも、IPアドレスのリース元をDHCPサーバーモードで動作しているAPに集約できます。
リレーエージェントモードはクラスター管理機能が自動的にフォロワーAPに対し設定するため通常は設定する必要はありません。クラスター管理機能が自動的に設定するときリーダーAPのみがDHCPサーバーモード、その他のフォロワーAPがリレーエージェントモードとして動作します。そのためIPアドレスのリース元サーバーが集約され、IPアドレスの重複を避け、かつ端末がAP間をローミングした後も同じIPアドレスを使い続けることができるようになります。
5. 設定・操作方法
DHCPサーバーの設定は仮想コントローラーのWeb GUIより行います。
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[拡張機能] - [DHCPサーバー]
DHCPサーバーとして動作させるときは機能を「DHCPサーバー」に設定します。
割り当てるIPアドレスの範囲、IPアドレスの払い出し先、リース時間、払い出しアドレス除外範囲をそれぞれ設定します。メモ
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リース時間が72時間以下の場合は72時間、72時間を超える場合は リース時間 = 最大リース時間 となります。クライアントから最大リース時間を超える要求が来ても、最大リース時間を超えて割り当てることはありません。
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[拡張機能] - [DHCPサーバー]
DHCPリレーエージェントとして動作させるときは機能を「DHCPリレーエージェント」に設定します。
送信先のDHCPサーバーのIPアドレスを設定します。
リレーエージェントモードはクラスター管理機能が自動的にフォロワーAPに対し設定するため通常は設定する必要はありません。DHCPリレー設定
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[無線設定] - [共通] - [SSID管理] - [VAP設定]
SSIDごとのDHCPサーバーの使用設定をします。
「使用する」を指定した場合、本製品のDHCPサーバーからIPアドレスが割り当てられます。
「使用しない」を指定した場合、外部のDHCPサーバーからIPアドレスが割り当てられます。DHCPサーバー VAP設定
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[保守] - [システム / ステータス情報]
各APのWeb GUI [保守] - [システム / ステータス情報]でDHCPサーバーの状態を表示します。
システム / ステータス情報(サーバーで動作するとき)システム / ステータス情報(リレーエージェントで動作するとき)
6. 設定例
構成
DHCPサーバーの設定
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[基本設定] - [クラスター設定]
仮想コントローラーのIPアドレス、および有線側のネットワークの設定をします。
固定のIPアドレスを割り当てるために、DHCP(クライアント)を無効にして、IPアドレス、ネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーを入力します。
本設定では、DHCPサーバーとして動作する仮想コントローラーのIPアドレスを「192.168.100.241」、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーのIPアドレスを「192.168.100.1」に設定します。
本製品がDHCPサーバーとして動作する場合、ここで設定されたデフォルトゲートウェイ、DNSサーバーの情報がDHCPクライアントに通知されます。[基本設定] - [クラスター設定]
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[拡張機能] - [DHCPサーバー]
DHCPサーバーの設定をします。
動作する機能を「DHCPサーバー」、IPアドレスの範囲を 「192.168.100.101 - 192.168.100.200 / 24 」、IPアドレスの払い出し先を「無線接続端末にのみ払い出す」、リース時間を「72時間」、払い出しアドレス除外範囲を「192.168.100.151-192.168.100.169 , 192.168.100.180」に設定します。DHCPサーバー設定
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[無線設定] - [共通] - [SSID管理] - [VAP設定]
無線端末を接続するVAPの設定をします。
SSIDを「WLX-DHCP_Server」、認証方式を「WPA3-SAE」、内蔵DHCPサーバーを「使用する」に設定します。(PSK(事前共有鍵)は任意の値に設定)
※ 内蔵DHCPサーバーを「使用しない」に設定すると、接続した無線端末は有線側のDHCPサーバーからIPアドレスが配布されます。DHCPサーバー VAP設定
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[設定送信] - [設定送信]
設定した内容を反映させるために設定送信を行います。
[設定送信] - [設定送信] を開き、 [送信] ボタンを押します。
7. SYSLOGメッセージ一覧
以下の文書を参照してください。